新聞から 長山藍子さんの話
1、三郎「27日の新聞で、女優の長山藍子さんも戦争の被害を受けた人だということを読んだぞ。見かけがうんとお若いが68歳だそうだから、さもありなん、じゃな。<お父さんが通信社記者だったから、長山さんは中国内蒙古生まれ>とある。今の中国内モンゴルじゃな。想像じゃが、当時の満州国のモンゴル地区じゃなかろうか。そうだとしたら、前に話したノモンハン戦争の現場付近じゃ」 六郎「大変なところですね。そこでご出産とは!・・いかに不便な、いかに不安なご出産だったか?想像を絶しますね。大変な戦争被害ですね」 三郎「ご出産は、まさにノモンハン戦争の年(昭和16年)じゃな。物凄い危険な状況があったんじゃないかい?。・・・あんたに話したじゃろうが、あの頃、関東軍では、辻参謀などが、無謀・無責任に暴走戦争やって、日本兵に、爆弾持たせてソ連軍戦車のキャタビラの下に飛び込ませておったんじゃ。じゃが現地被害者は、長山さんのご家族にも大きく及んでおったんじゃ。ほんまに大変じゃったと思うぞ。そんなこと、辻参謀の頭の中には、勿論、露ほども無かった」
2、三郎「長山さんが4歳の時(終戦後)生まれたばかりの弟を背負った母に手をひかれて帰国した。父とは途中ではぐれた、とか。その時の不安・苦労も想像を絶するぞ。帰国して一緒になった父は、長山さんが中学生の時に亡くなった。母も長山さんが20歳半ばの時に亡くなった。ご両親の早世にモンゴル在住が響いておるかも知れんぞ。そうなら、これも戦争被害じゃ。長山さん自身は今、富士山が見える別荘で、ご主人とそば打ちなどしておるそうじゃ。それはいいが、いずれにしても、ご家族として戦争の大被害者じゃ。・・もっともっとひどい戦争被害者がいっぱいいたぞ。一度しかない一生をメチャメチャにされたんじゃ。わしの両親も、わしら兄弟も、戦争被害者じゃ。そうして、それをもたらしたのは、近衛文麿とか東条英樹とか板垣征四郎とか、辻政信じゃ。彼らの心の隅に、そんな庶民のことは露ほども無かったんじゃ」
3、歴史を学ぶと、近衛文麿や東条英樹が、戦争の結末を予想できておりながら、庶民のことなんか、全く意に介せず、無責任な、ほんまにチャランプランな、政治をしたことがよく分かるぞ。板垣・辻なども、その心情は、<今日の暴走族ややくざ>と全く同様じゃ。・・・これが現実じゃ。これが歴史じゃ。・・・戦後64年経った。その現実・歴史が忘れれてきておる。それだけじゃないぞ。わしゃ、渋谷の紀伊国屋書店に行って、<日本史>の書棚の前に立った。戦争の記録が多くなっておる。それも、<日本の戦争は悪くなかった><日本は、己の立場を強調せねばならぬ>ちゅう主張の本が実に多くなっておる。それを読んで<そうだ、そうだ、やれやれー>ちゅう気分になる人間が多いんじゃないかい?・・実に危険じゃ」
4、三郎「あのな、日清戦争・日露戦争・第一次世界大戦・満州事変・日中戦争・(ノモンハン戦争)・太平洋戦争、と見てくれば、なにも日本ばかりが悪いわけじゃない。相手に非があることもあるんじゃ。歴史を正しく解釈することは大事な事じゃが、歴史解釈を悪用して『今こそ日本は自分を押し出すべきだ。おとなしくしちゃあいかん』という主張が多過ぎる。無責任じゃ。彼らの心には、長山さんや、空襲で焼け死んだ莫大な国民や、戦車の下に飛び込まされた青年や、わしの父母や・・・、のあの超悲惨な生涯を忘れておる。個人や国民の誇りを守りつつも、一人一人の一度しかない人生を守ることが、一番大切なんじゃ。紀伊国屋に並ぶ本の著者や、首相や知事の、その心に、<庶民の一度しかない人生は>は、全くないぞ。彼らは今様の近衛文麿・東条英樹・服部卓四郎・辻政信じゃ」
5、六郎「我々、一体、どうすれば?」 三郎「まず、歴史を学べ。政治家や軍人が、おのれの利益や、自己顕示欲や、暴力好みや・・・、の為に、庶民の運命を如何に無視し、狂わしたか?・・どんなハッタリをやって、どんなごまかしをやって・・を、しっかりと知れ。次に今の目の前の、テレビで見る、政治家(首相も知事も)や、学者や、元自衛隊幹部や、・・・の人間をじっくり見ろ。そうすれば、目の前の人間どもが、さっき言うた、<昔の非人間ども>とおんなじかどうか、おのずから、分かってくるぞ。そのうえで、選挙に行け。世論調査に答えろ。・・・そんなことしかないんじゃ。孫子の為に頑張らにゃならんが、そのためには、人間の過去を知って、それを参考にして、目先のハッタリ人間や傲慢人間どもを、たたきのめすしかないんじゃぞ。・・・歴史を学ぶと、例えば近衛文麿が日中戦争を防げたのにそれをせず、しかも<まーええわ、その時はその時だ>ちゅうチャランプラン発言をしたことが分かるぞ。そうすると、麻生首相の、あの、嬌慢にしてチャランプランな言動の意味がわかってくるんじゃ。東条首相が、早くから、<生産力の面からみても、アメリカと戦争して絶対勝てない>ということを知りながら、<精神力だ>などと言って、国民の命を毛ほどの軽さに扱ったことが分かるぞ。・・おるぞ、おるぞ。・・今も・・。おんなじような政治家や学者たちが。そんな人間は、断固排斥せんならんのじゃ」
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